暮らすがえジャーナル
こんにちは暮らすがえジャーナルです。
「暮らすがえ」とは、ライフステージや家族の成長、季節や気持ちの変化に合わせて、暮らしに自ら手を加え、ありたい「私らしい暮らし」を実現していくことをいいます。
前回に引き続き、高木さんときさらさんご夫婦のお話。
お子さんが生後半年の時に「シェアハウス日日」を始められたお二人。
どうしてシェアハウスという環境でお子さんを育てようと思われたのか、また、そんな暮らしを選択したお二人が考える暮らしの豊かさとは何なのか、お話を伺いました。
――このシェアハウスでは、お子さんと一緒に暮らしているんですよね。シェアハウスでの子育てに不安はありませんでしたか?
きさら:むしろ、2人だけで子育てをすることへの不安の方が大きかったんです。保育園ももちろんありますが、2人だけで働きながらまだ言葉の通じない子どもと向き合っていくって無理なんじゃないかなと。
シェアハウスは自分たちが管理人なので、どんな方が入るかも分かっているし、子どもがいても大丈夫って言ってくれる人と住む選択ができるので、そこに不安はなかったですね。
――お子さんは生まれたときからシェアハウスで暮らしているんですか?
きさら:そうですね、シェアハウスを始めたのが生後半年くらいでしたから、もうずっとこの環境で育っています。
「ここの段差が降りられなかったのにもう今はひとりで降りられる」とか、そういう娘の成長を一緒に見守ってくれる人がいるって、すごく心強いと思っています。
高木:例えば子どもがぐずっちゃって2人とも怒ってピリピリしてしまうと、僕たち家族3人だけではなかなか切り替えができないんですよね。
でも、シェアハウスだと常に他の人がいるんです。
子どもが泣いていると、「どうしたの、これ食べる?」みたいに、全然関係ないところから入ってきてくれる。
これがすごく助けになっていますね。誰かがそうやって声をかけてくれることで、親子間のピリピリした空気に抜け道ができるんです。
――確かに全然違う人が緩衝材になることってありますよね。
きさら:街中でもありますよね。泣いている子どもに知らないおばちゃんが「どうしたの」って話しかけたらびっくりしてケロッと泣き止むみたいなこと。それが家の中で起きるんです。
娘も、親に対してはどうしても甘えて言うことを聞かなかったりもするので、親ではない大人が側にいるっていうのは良い環境なんじゃないかなって思います。
――第3者の視点が入るっていいですね。親ではない大人が近くにいる環境って最近はあまりないかもしれません。
きさら:そうですね。
最近面白かったのが、私が食事の時に納豆を混ぜようとすると「違う!先に混ぜてからタレを入れて食べるんだよ」って子どもに言われてたんです(笑)
他の住人さんに教えてもらったみたいなんですけど、それって正しい食べ方というよりも、その人の家庭のルールですよね。
そうやって別の家庭のルールが持ち込まれてくる、不思議な環境なんですけど、そういうのも面白いですね。
――このシェアハウスで、お子さんにどんな風に育って欲しいと思いますか。
高木:この環境が良かったのかどうか、最終的には彼女自身に聞いてみないと分かりません。でも、いろんな価値観があることは知ってほしいなと思います。
その人の考え方が良いとか悪いとかじゃなくて、世の中にはいろいろな価値観があるんだよっていうことを知ってほしいですね。
きさら:まだ複雑な悩みを持つ年頃ではないですが、この先成長していく中で、親に相談しにくい悩みとか、親以外の意見が聞きたいと思ったときに、学校や塾以外にも、気軽に相談できる大人が周りにいる環境は作ってあげたいなと思います。
共用スペースにあったお子さんおもちゃ。おままごと用のキッチンはきさらさんの手作りなんだそう。
――暮らし方も、子育ても、ある意味では「普通と違う」選択だと思うのですが、あえてそこに暮らしの豊かさを定義するとしたら何だと思いますか。
きさら:そうですね、ただ消費するだけじゃなくて、自分だったらどうするかなって考えて、形にしていくことが、豊かな暮らしなんじゃないかなと思います。
家が整っていなくてもいいし、完璧じゃなくてもいいんです。
暮らしに対して自分で考えて試行錯誤すること自体が大切なんじゃないかなって。
みんなで手を動かしてご飯を作って、シェアして食べることも、その積み重ねがすごく豊かなんじゃないかなと。
高木:その方が健全な感じもしていて。
今って、SNSや広告もそうですし、焦らせるような情報がたくさん入ってくるじゃないですか。
収入をこうしてあげよう、ダイエットしないと脱毛しないと、仕事のスキルアップはこうやるんだ、とか。
それをそのまま受け入れて流され続けると、心が辛くなっちゃうんじゃないかなと思うんです。
そこから距離を置いて生きていくには、自分なりの価値観を持って、手を動かして、暮らしという自分の足場を固めていくことが大事なんじゃないかなと思います。
大それたことじゃなくていいんです。
一息つくために急須からお茶を淹れようとか、自分で時間の使い方や暮らし方を選択していくことが大切なのかなって。
――この先の夢やこんな暮らしがしてみたいとかありますか?
きさら:集合住宅みたいな形のシェアハウスができたら理想ですね。
都内でやるには条件の合う場所がなくて、なかなか難しいなと思いますけど。
例えばお互い顔見知りの家が近くにたくさんあって、お互いの家を行き来して。
そんな「まち」で暮らす、みたいな。そこでいろいろなものをシェアして暮らすんです。
そのくらいの温度感で、助け合える人たち、仲間と一緒に暮らせたら、理想ですね。
高木:仲間とシェアをしながら暮らすのが楽しいと知ってしまったので、別のやり方であってもいいから、みんなといろいろなものをシェアしながら暮らしたいなと思います。
いろいろな人が交わって、予想しなかった出来事があるかもしれないし、新しい商品が生まれるかもしれないですよね。想定していないことが起きる、って期待しながら生きていくのって楽しいじゃないですか。
もちろん、計画を立ててその通りに進んでいくのも良いんですけど、よく分からないけれどこっちの方向が何だか面白そうだなって思って進んでいくのが楽しいなと思います。
いろいろな人と関わることで、刺激を受けて考え方が変わったり世界観が変わったりもありますし、そういったこと全てを楽しみながら生きていきたいと思います。
編集後記
「子どものことは大好きだけれど、自宅で、一人で言葉の通じないこの子の世話をしていたら、時々どうにかなってしまいそうになる。」
喫茶店でぽつりと漏らした友人の顔が思い浮かびました。
さまざまな人と暮らしをシェアしていく。
それは、核家族化が進む時代だからこそ必要とされていることなのかもしれない。
ただ、その暮らしが良いかどうかは、人による、というのもその通りで。
暮らしも、生き方も、正解は人それぞれ。
でも、小さなところからでも、自分で考え、暮らし方や生き方を選んでいく。というお二人の言葉がとてもしっくり来たんです。
私は、何を大切にしたいのか。
例えば「出産」という人生の変化点で、家族とどう暮らし、どう生きていたいのか。
少しずつでも考え、選択していくことが、私らしい暮らしに繋がっていくのかもしれません。
そして、それを実現する手段の一つに「暮らすがえ」があるのだと思う。
さあ、暮らすがえ。