暮らすがえジャーナル

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日々の暮らしに運動器具が溶け込む。ユーザーの「欲しい!」を形にしたミズノの企画開発者

こんにちは。暮らすがえジャーナルです。
今回は、ミズノ株式会社でミズノヘルシーインテリアの企画開発を担当されている浅野さんにお話を伺いました。

トレーニンググッズとインテリアを掛け合わせた、「ミズノヘルシーインテリア」という新しいジャンルを開拓された浅野さん、その誕生秘話と、ご自身の暮らしについてお話いただきました。

浅野 麻美 さん

ミズノ株式会社グローバルイクイップメントプロダクトLH・WB・SF企画課所属。2017年からミズノヘルシーインテリアの企画開発に携わる。

インテリアに馴染む健康用具が無い?ユーザーの声から生まれた新しい市場

――ミズノヘルシーインテリアとはなんですか?

ミズノが展開している、リビングのインテリアになじむように作られた健康用具です。スクワットのできるチェアやクッション素材のダンベルなど、さまざまなアイテムを販売しています。

――ミズノヘルシーインテリアの開発に携わるようになったきっかけを聞かせてください。

もともと、スポーツ用品の研究開発で入社したのですが、2017年に今の部署に配属になりました。ゴルフクラブや野球のバットなどスポーツに関するものの制作がされている中で、わたしの部署が扱うのは「スポーツ用品以外のもの」

さまざまな企画があるなかで“一般の消費者向けの健康商材を制作しよう”というのがスタートでした。そこからミズノヘルシーインテリアの開発にたどり着くまで、1年半くらいかかりましたね。

――最初から今のようなコンセプトの商品を開発しようと決まっていた訳ではなかったのですか?

「女性向けの健康用具」というざっくりとしたテーマがあったのですが、もうすでにそういった商品はたくさん販売されていて。
それで、改めてどんなニーズがあるのか、そもそも現状に課題はあるのかなどが知りたくて、最初は消費者の方にとにかくヒアリングをしました。モニターの方に家の中を見せていただいたり。

そうしたら、自宅で使用するダンベルやゴムチューブのような健康器具って色が派手なものが多いんすよね。
だから、使用した後はインテリアに馴染まないから片付けてしまう。一度片付けてしまうと出さなくなってしまって、そのまま忘れちゃう。それでまたいろいろな商品を購入してしまうという声があったんです。

だから、そういった商品をリビングに置いていると、ご家族から「また使わなくなるのに買ったの?」って言われちゃったりして。
そういうところも気になってしまってますます片付けてしまって使わなくなると、皆さん同じようなことをおっしゃっていました。

――分かります、ダンベルや健康用具って「いかにも」という見た目でそのまま置きっぱなしにできないんですよね…だから運動もやらなきゃとは思うけどなかなか習慣化できない…

それならば、運動ができて、なおかつ片付けなくても、リビングに置きっぱなしになっていても気にならないような、家のインテリアに寄せたデザインにしてはどうかと考えました。

そして最初に生まれたのが、スクワット用の椅子「ル・プリエスクワット」です。
2018年の発売から30万台以上を販売させていただいています。

――どうやってアイデアを形にしていったのですか?

社内には運動に関する知識はたくさんあったのですが、これまで家具を扱ったことは無く、インテリアに関するノウハウはありませんでした。そこで、家具メーカーさんに流行の家具のカラーや、基本的な知識をいろいろと教えていただいて、それをデザインに落とし込んでいったんです。

スポーツと家具の可能性を掛け合わせていった感じですね。

でも、当時はミズノヘルシーインテリアというカテゴリー自体がなかったので、そもそもどこに需要があるのか、ターゲットは誰なのか、果たして売れるのか?と社内で理解を得るのにも少し時間がかりました。

いざ発売してみたら最初のオンライン販売がすぐに完売して、そこからどんどん売れていって。そうなると社内ににも、なるほどこういうニーズがあったのかと理解が広がっていきました。そこから商品の幅がどんどん広がっていき、今は、商品の見せ方についてやブランディングについても、社内で議論ができています。

「動かないことは罪」と思える、運動が身近にある暮らし

――浅野さんも、実際にご自宅でモニターをされているんですよね?

はい。企画者だからというのもありますが、うちには例えばル・プリエスクワットだと5台あります。

――え、5台もですか!

ダイニングやリビング、あと洗面所にも置いていますよ。

普段から普通のイスとしても使っています。出しっぱなしにしていても違和感のないデザインですし、いつでもスクワットもできますし。リビングにもさまざまなアイテムを置いています。

浅野さんのご自宅の様子

――実際に使用されてみてどうですか?

私、実はこういった製品を開発するまで運動とはほとんど縁がなかったんです。

でも、身近にこういう商品があって、いつでも運動ができる状態にしておくと、だんだん我が家の日常に運動が馴染んできましたね。「動かないのは罪」と思っちゃうくらい(笑)

例えば、髪が長いとお風呂上りにドライヤーで髪を乾かすのに時間がかかっちゃいますよね。あの時間、立ってるだけなのがもったいないなと。洗面所でスクワットのイスに座りながらドライヤーしたり、歯磨きをしたり。夫や息子はスポーツジムにも通っているのでもう少し負荷のかかる運動がしたいとクッション式のダンベルなどはあまり使っていませんが、それでもスクワットの椅子に座って運動はしていますね。

家の中にずっと置いてあることでいつでも使えるんですよね。普段の生活にポンと置いておくだけで、運動が習慣になりました。テレビを見ていたり、ソファでくつろいでいたり、座っていても運動ができるので無意識にどこかを動かしていて、暮らしの中で運動をするのがもう自然なんです。

――運動って、やった方がいいのは分かっているけれど、習慣がないとなかなか取り組めないので、暮らしのなかで無意識にできるのはすごく素敵ですね。

お客様に無意識の運動習慣を、日々の暮らしに新しいヒントを。

――ちなみに、浅野さんが家で過ごしている中で一番好きな時間ってどんな時ですか?

そうですね。料理をしている時間でしょうか。

――意外です、運動をしている時ではないのですね(笑)

料理は「無」になれるので好きですね。余計なことを考えないで作業工程とか、料理をすることだけに集中すると、リフレッシュできるんです。

逆に、それ以外の時間は、仕事のことを考えてしまいますね。暮らしになじむアイテムの企画開発なので、日常生活の中でも「こんな商品があったらいいな」とついつい考えてしまいます。

商品のネーミングも一部は私が考えているのですが、親しみを込めて伝えるにはどんな名前がいいんだろうとか、電車でもお風呂の中でもついつい考えてしまいますね。仲間からは妄想って言われちゃうのですが、でも、ついついこんなアイテムがあったらいいなと妄想しちゃいます。

――それだけ暮らしのなかで実際に使用されて、日々アイデアを巡らせていらっしゃるから、ユーザーの「これが欲しかった!」という商品が生まれるのだろうなと思いました。今後挑戦したいことはありますか?

お客様にも、普段の生活の中で無意識に運動をする習慣ができたら嬉しいです。

スポーツをする人ならミズノの商品に関わることもあると思いますが、普段スポーツをしていない人にもミズノに接点を持ってもらいたいなと思っています。

あとは、介護や離れて過ごす家族の見守りなど、運動以外の課題も掛け合わせた商品を企画したいなと思っています。

編集後記

暮らすがえリノベーションでミズノ株式会社の東京本社のショールームをアレンジしにいった時のこと。「面白い社員さんはいらっしゃいませんか?」とご紹介いただいたのが浅野さんでした。

暮らすがえリノベーションの様子

スポーツというと、普段から習慣がない人には、その必要性を感じているけれどなんだか縁遠く感じてしまうかもしれません。けれど、実は暮らしに密接していて、日常の中に溶け込むことで、健康的な習慣になっていく。

ありそうで無かった、けれどユーザーの「欲しい!」を見つけて新しいジャンルを開拓し、形にしていく。

そんな、浅野さんのような挑戦を、私たちも日々の暮らしの中で見つけられたら。

さあ、暮らすがえ。