暮らすがえジャーナル

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「私たち家族に合うスタイルを探し続けていく」3兄弟の成長を見守るマルサイさんの”暮らすがえ”

こんにちは暮らすがえジャーナルです。

今回は、漫画家のマルサイさんにお話を伺いました。
子育てのようすや日々の暮らしを綴ったコミックエッセイが人気を集めるマルサイさん。

現在は2LDKのマンションでご主人と3人のお子さんと5人暮らし。
男の子3兄弟を育てながら、2LDKで快適に暮らすために、色々な試行錯誤を繰り返してきたんだそう。
一体そこにはどんな暮らすがえがあったのでしょうか。

マルサイ さん

男の子3人と夫の5人家族。男の子あるあるや家族のほのぼの話を描いた絵日記をインスタグラムなどで発信。著書に『マルサイ家の三兄弟 ドタバタ絵日記 男子が3人います。』『主婦力ゼロからのやってみた家事』(大和書房刊)など。最新刊は『40代からの心と体を整える ゆるランニング!』(エムディエヌコーポレーション)

Instagram:

@maru_sai

子どもに自立してほしい!から始まった暮らしの工夫

――今は2LDKのマンションにお住まいなんですよね?

はい。マンションを分譲で買ったときは夫と2人暮らしだったので、リビングを開放的に使いたいなとこの間取りの部屋にしたのですが、子どもが3人生まれて、さらに成長していくにつれ、いろんな悩みが生まれています。

でも、大きな家に引っ越すわけにもいかないし、将来子どもたちが自立したら、また夫婦二人暮らしに戻る。
だから、家の中をどう整理して暮らしやすくしてていくか、色々と試行錯誤を続けてきました。

――最初に、そういった工夫をしないと、と思ったきっかけはなんだったんですか?

三男が生まれたときですね。
私は先回りするタイプで、自分がやった方が早いと、長男と次男のときはお世話をなんでもやってあげることが多かったんです。

でも、三男が生まれたとき、上の2人はまだ5歳と3歳ぐらいで、上の子は幼稚園に入ったばかり。
そこに新生児が来ると、上の2人のことを今まで通りにできなくなったんですね。
それまではパジャマや服の準備なども全部私がやっていましたが、それでは生活が回らないから、全部自分でやらせなきゃ!と。

――赤ちゃんを育てながら小さなお子さん2人のお世話は難しいですね…

そうなんです、半ば必要に迫られて、子どもの自立を促す仕組みを家の中につくることにしました。

子どもたちが幼稚園から帰ってきて、ソファーにポンとおかれた制服を私が片付けるのではなく、自分で制服を掛けられる場所があったらいいな、と子供用の背が低いポールハンガーを買ってみたり、幼稚園のコップセットを子どもが洗顔したついでに自分で用意できるよう、洗面所に準備するコーナーを設けてみたり。本当にちっちゃいところからの改善です。

お子さんが3人とも小学生だったころに作られたランドセル&勉強道具置き場

――どうやってその仕組みを考えて作っていったんですか?

収納系の本を読んだり、整理収納アドバイザーの方のブログを読んだりですね。

私自身、整理整頓や片づけが苦手で、自分の幼少期も部屋はめちゃくちゃでした。右も左も分からない、センスもないところから、いろんな方の情報を参考にして、使えそうなものがあったら片っ端から試していましたね。
その中から自分の家にあうものが残った、という感じでしょうか。
子どもの動線を見て、ここにこういうのがあったらいいな、散らかる原因はどこにあるのだろう、と子どもをよく観察しています。

でも日々の成長とともに、今も試行錯誤が続いていて、いまだにゴールはありませんね。

――お子さんが成長してくると、その分また悩みも変わってきますよね。

年に大体2回ぐらい「もう無理っ!」と思うこともありますよ(笑)
子どもが散らかしたい放題散らかして、私が拾い集めて戻して。何で私ばっかりこんなことをしなきゃいけないの、って。
どうしたらもう少し片づけやすくなるのか、意見交換をすればいいのですが、子どもも年頃になってきたので反発したり、相手にされなくなってきたり。
家族5人、この狭い空間にいるから「快適に暮らすには、まず何より工夫ありき」だと思うんですけどね。

今ではもう長男と次男は中学生。
部屋割りも、うちは1人1部屋用意できないので、受験生がいるときは、1人になれる部屋を与えて、他の2人は相部屋にするなど、状況によって変えていこうかなと思っています。

我が家に合うスタイルは、結局自分たち家族にしかわからない。

――色々試行錯誤されている中で、今、お気に入りの場所はありますか?

この前出版した本の中でも紹介したのですが、整理カウンセラーの大森めぐみ先生に提案していただき、リビングの一角にファミリーライブラリーを作ったんです。

これまで、本は子ども部屋に置いていたのですが、みんなリビングで読むのにわざわざ子ども部屋まで取りに行ってたんですよね。
ただ、戻すのが面倒くさいので、リビングは本だらけに。
もう10年以上そのシステムと戦ってきたのですが、先生が「本が多いことは尊重しましょう。むしろ本を中心に考えて、家族で本を読めるスペースを作るのもいいじゃないですか」とアイディアを出してくれました。

それで、全部の本をリビングの一角に集めたんです。
図書室っぽい雰囲気が楽しめるので、その一角は私もかなりお気に入りです。

目から鱗でしたね!リビングってそんな風に使ってもいいんだって思いました。

リビングの一画に作られたファミリーライブラリー

――確かに、リビングに図書スペースを作ってはいけない、というルールは無いですもんね。

そういう意味では、ダイニングの役割も変えたんです。

リビングの中心に置いていたソファを壁に寄せて、ダイニングに置いていたテーブルをドンとリビングの中心にしたんです。
元々テーブルを置いていたダイニングスペースには別の机を持ってきて、私の仕事場所やリラックススペースになりました。

これまで、リビングのソファーに子どもたちが集まっていたので、家の中心的な役割を担っていたのですが、年齢が上がるにつれて、ソファーに子どもが集まると喧嘩するようになってきたんですよね。
親は親で、子どもたちがソファーに集まって散らかすと、それを怒る。ソファーが諸悪の根源だ、みたいな感じになってきて。

――そこから、ダイニングテーブルをリビングの中心にすることでどう変わったんですか?

ご飯を食べたりお茶をするときは、家族みんなでダイニングテーブルに集まって楽しく過ごして、それ以外は自分のスペースに戻るようになりました。

そしたら、この半年で子どもたちの喧嘩が無くなったんですよ。

私も、リビングが散らかることがなくなったので、「私はリビングが整っていればそれでいい!自分の部屋を散らかしても、汚くて嫌な思いをするのは自分たちだからね!」と思えるようになり、子どもたちに小言を言わなくなりました。

以前のリビング。ダイニングにテーブル、リビングの中心にはソファーが置かれていた

現在のリビング。中央にダイニングテーブルが置かれている。ソファーは窓際に移動。

――すごい。ダイニングテーブルの位置が変わるだけでご家族の関係がそこまで変わるんですね。

リビングは家族が集まってくつろぐ場所として、ダイニングは食事をとる場所として使うものだとマンションを買ったときは思い込んでいたのですが、そうでなくてもいいんだ、と思いました。

今まで片付けや子どもたちの動線づくりは色々試したり真似したりしてきましたが、結局は他所のやり方なので、自分の家に合わなかったこともたくさんありました。
プロからアドバイスをもらっても、しっくりこないこともあるし、かと思えば、ダイニングテーブルの位置だけで家族の関係が変わることもある。

やっぱり、家族じゃないとわからない部分もあるんですよね。

だから、自分の家の生活に合ったスタイルを常に探して、その都度生活に合わせて変えていけばいいかな、と。
引っ越すという選択もあるかもしれませんが、遠くない将来、子どもたちが出ていったら、夫婦2人になる。
やはり今のこの間取りは、自分たちには無難な大きさなのです。

――限られた空間でも、家族の成長や変化に合わせて、自分たちにあった暮らしに変えていくことが大切なのかもしれませんね。ちなみに、これまでで一番思い入れのある暮らしのアレンジはどんなものですか?

児童館とかプレイルームの雰囲気が好きで、子どもたちが幼いころ、それをリビングの一角に再現して、子どもたちが自由に好きなことをしている姿を見るのは楽しかったですね。

今はそのスペースはもうないのですが、当時の写真を振り返ると、そこで撮った写真がとても多くて、お気に入りの空間だったんだな、と改めて感じています。
そこでは無印のボックスをとにかく駆使していましたね。
工作台にしてみたり、ボックスを横に置いてその上にキーボードを置いてみたり。
上の2人が小学校に上がったときは、ランドセルを二つ置いてその下に学用品を置いたり。
今も本棚や三男の私物スペースとして、現役で活躍しています。

以前のリビングの様子。プレイルームのようにお子さんたちが思い思いに遊んでいる。

――マルサイさんにとってもお子さんたちにとっても素敵な思い出の場所ですね。

でも、子どもたちにとっては、家はちょっと居心地が悪いくらいがいいんじゃないか、と思うこともあります。

――え、あえて居心地を悪くする、ということですか?

多少居心地が悪くて、さっさと自立して自分が思う通りの好きな空間を作ればいい、とも思います。
あまりに心地のいい家にしちゃって、子どもが歳をとってもずっと家にいられるのも困りますから(笑)

実際、中学生になる次男は「俺は自分の思うようにいろいろインテリアを揃えられる自分の城が欲しい!早く一人暮らししたい」と小学校5年生の時から言っています。
子どもたちには早く自立して家を出てもらって、夫と2人でゆっくり過ごしたいです。

――確かに、それはそれで一理あるかもしれません(笑)

編集後記

新しい家に引っ越してきたとき、私たちは間取りを見ながら「ここはリビングだからソファーとテレビを置こう」「ここはダイニングスペースだからダイニングテーブルを置こう」と空間に沿って暮らしを作っていく。
でも「ダイニングは食事する場所」「リビングはくつろぐ場所」という決まりも法律もどこにもないんですよね。

空間の役割に囚われず「この家の中で、都度、どう暮らしていくのが私たち家族にとって最善なのか」を考えながら暮らしを作っていけば、同じ間取りでもそれぞれ自分たちらしい暮らしを作っていくことができる。
(そして、それが「大変なこと」ではなく、頭を抱えるものでもなく、気軽にできる未来を私たちは作りたい。)

今の暮らし、実はちょっとした工夫で、あるいは発想を変えてみると、大きく変わるかもしれません。

さあ、暮らすがえ。