暮らすがえジャーナル
こんにちは、暮らすがえジャーナルです。
今回は、とある女性のインタビューをお届けします。
孤独、SNS疲れ…そこから生まれる自己肯定感の低下。
そんな悩みを彼女はどう乗り越えていったのでしょうか。
暮らしと心は繋がっている?
念願の新婚生活、その4ヶ月後に告げられた海外駐在。
――Syrupさんは旦那さんとの新婚生活を始めたわずか4ヶ月後、「アメリカ駐在が決まったのでついてきて欲しい」と言われたそう。
もともと海外転勤があるかもしれないと結婚前から聞いていたのでついて行くのは了承していたのですが、そんな突然!?結婚式もこれからなのに!?とびっくりしたのが正直な感想です(笑)
辞令が出て2ヶ月後には夫が先にアメリカへ向かいました。結局日本で二人で暮らしたのは半年ほどでしたね。
私も一度実家に戻り、当時勤めていた会社を退職。夫が一時帰国で帰ってきたタイミングで結婚式を挙げて、そのまま私も一緒にアメリカについて行きました。
引っ越しだったり式の準備だったりと本当にばたばたした1年間でした。
アメリカの駐在は5年前後になる予定と言われていました。
すぐに家族や友達に会えない距離に引っ越すのは初めてだったので寂しい気持ちや不安もありましたが、それ以上に楽しみな気持ちの方が大きかったですね。
もともとアメリカのカルチャーが好きで、学生時代からアメリカンレトロなイラストを描いたり、オールディーズのバンドを組んだりもしていたので、現地で実際の文化に触れられる!憧れの地で暮らせる!というワクワクの方が勝っていたかもしれません。
「私は何もできない」キラキラSNSに自己肯定感が下がった”病み期”
――楽しみな気持ちが大きかったというアメリカでの生活、しかし順風満帆な駐在ライフというわけでもなかったようです。
最初の1~2か月は毎日が新鮮で、異国の非日常な感じがとても楽しくて。
でも、3か月くらい経つとそれにも慣れてきちゃうんです。
日中は夫が仕事に出ているし、現地の友達も少なかったので家にいることが多かったのですが、そうなるとやることが限られるから、SNSを見る時間が増えていったんですよね。
SNSでは同じように夫の転勤でアメリカ駐在している方の投稿が色々流れてくるのですが、みんなとっても充実しているように見えて。
車を自分で運転して、外の世界に出て、英語もバリバリ話してキラキラした日常を送っている。
対して私は、車の運転は一度挑戦してみたけれど怖くて諦めてしまったし、英語にはまだまだ自信がない。
いつも部屋の中で一人でいる。日本の友達も時差があるので気軽に話せません。
オンラインの英会話教室も始めていたのですが、周りと比べて焦ってしまったのか、誰にも強要されていないのに「勉強しないといけない」という気になってしまって。好きだったはずの英語も全然楽しくなくなっていました。
「他の人はあんなに駐在生活を満喫できているのに、自分は何もできないじゃないか。」
夫には不安を打ち明けたりしていましたが、自己肯定感がすっかり無くなっちゃって。
あんなに楽しみだったはずのアメリカ生活から一転、”病み期”突入の生活になってしまいました。
――「1年くらいは色々悩んでたんじゃないかな。」というSyrupさん。転機になったのは、趣味で書いていたイラストだった。
子どもの頃から絵を描くのが好きで、社会人になってからは趣味で描いた絵を時々SNSにあげていたんです。
絵を描きだすと何時間でも集中できちゃうので、SNSで人の投稿を観て落ち込むくらいなら、自分の好きなことに打ち込もう、いっぱい絵を描こうと決めました。
タブレットを使ってリビングで描いた絵をSNSにあげていきました。
夫との旅行の記録、好きなもの、誰かの似顔絵…。
ありがたいことに続けているうちにコメントをいただいたり、イラストのオーダーを頂いたりすることが増え、そこから人と繋がる機会も出てきました。
自分に対する自信にもつながりましたね。
Syrupさんが描いたイラスト
そしたら、現地の友達も増えてきて。
SNS上ではみんなキラキラした内容を発信しているけれど、実は似たような悩みを抱えているんだということも分かりました。
「悩んでいるのは自分だけじゃないんだ」そんな風にしてやっと”病み期”を乗り越えられたんです。
もっといろんな人と話したいと思うと英会話のレッスンも徐々に楽しくなってきて。
今は自分で「こんな会話を練習したい」と先生にお願いしたりしています。
お気に入りを詰め込んだ、私だけのデスク
――リビングでずっと絵を描き続けていたSyrupさんだったが、今年になって自分専用のデスクを作ったのだそう。
実は、絵を描く姿勢が悪かったのか腰や首を痛めちゃって。正しい姿勢で絵を描くために今年に入って、寝室の一角を整理して自分専用の作業デスクを作りました。
Syrupさんのデスク
家の中は夫と共通で好きなアウトドアテイストでそろえているのですが、ここだけは私の空間にしようと個人的な趣味全開にしています(笑)
デスクに座ると気持ちも切り替わって絵を描くことにより集中できるし、好きな本や趣味で集めたヴィンテージグリーティングカードを眺めているのも、新しい絵の発想につながるし楽しいです。
一番お気に入りの本だというグリーティングカードのイラスト集。いつでも眺められるよう常にデスクに置いているのだそう。
ヴィンテージグリーティングカードは、今年一時帰国したときに「そういえば私ってカード集めるの好きだったよな」というのを思い出したんです。
日本で集めていたものを持ってきて、こちらでも時々買い集めるようになりました。デスクを作ったから自分の好きなように飾って眺めて楽しめるので。
イラストに集中できるだけじゃなく、好きなものに囲まれた時間を過ごすことができる。こんなことなら、もっと早くこの空間を作ればよかったなと思います。
Syrupさんが集めているヴィンテージグリーティングカード。カードを入れているケースもお気に入りのものなのだとか。
アメリカでの不妊治療、出産…私は私らしくいたい。
――病み期を脱したSyrupさん。その後、現地で不妊治療にも挑戦し、今は新たな家族の誕生を控えている。駐在期間が終わるまで、子育てもアメリカで行う予定だ。
不妊治療は正直大変でした。
でも、”病み期”の自分なら乗り越えられなかったと思います。
今の私だから、素直に子どもが欲しいと思えたし、異国の地での不妊治療にも挑戦できた。
出産もこっちで行う予定です。今、夫と相談しながら、少しずつ子どものベッドなども準備しています。
あ、そういえば、子どもや自分に何かあった時、夫がいなくても病院に向かえるようにと車の練習も再開しました。
あんなに「アメリカで車を運転するのは怖いから嫌だ!」と思っていたのに(笑)
自分がやりたい、こうしたいという目的があれば、案外なんでも挑戦できるんだなと思いました。
Syrupさんのリビング「子どもが日中過ごすスペースを作って、ダイニングテーブルの位置を変えました」少しずつ、子ども用のアイテムが増えてきているのだそう。
「ここも実は自己満足だけど、こだわりなんです(笑)」と教えてくれたキッチンカウンター。季節感のある小物や夫婦の思い出の品を飾っているそう。
――「子どもが生まれても絵は描きづつけたいです。」とSyrupさんは語る。
あと、駐在期間中に旅行ももっと行きたいねと夫と二人で話しています。
リビングに貼った地図には訪れた国立公園で買い集めたワッペンを貼っているのですが、駐在生活が終わるまでに、これもいっぱいにしたいですね。
いろいろあった駐在生活ですが、残りの期間も私は私らしく暮らせていければと思います。
リビングに大きく飾られたアメリカの地図。その周りには現地で買ったワッペンが貼られている。
編集後記
暮らしと気持ちは繋がっている。
自分の心が荒んでいると、家の中は散らかっていくし、散らかっていると心がさらに荒んでいく。
逆に、家の中にお気に入りの空間があると、気持ちは少しずつ上向いていくし、気持ちが上向くと「もっとこうしたい」と家の中が彩られていく。
Syrupさんは、孤独な環境の中で、誰かと自分を比べて落ち込む状態から、前向きな気持ちを取り戻していく中で、誰のものでもない、自分だけのお気に入りの空間を手に入れ、趣味を楽しみ、さらにいきいきと「私らしく」生きているように思いました。
家の中を私のお気に入りで彩ると、より幸せな暮らしが待っているかもしれない。
さあ、暮らすがえ。