暮らすがえジャーナル
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日々仕事に追われ心身ともに疲弊した、自称「限界アラサーOL」。
「掃除する暇がないので部屋の中に荷物は増やしたくない!」と言う彼女の家に半ば無理やりトライアングルフレームの飾り棚を取り付けて数か月後、彼女からメッセージが来た。
「家の中に、前に取り付けてもらったものより大きな飾り棚が欲しいのだが、どれもしっくりこないので相談に乗って欲しい。」
前回家を訪れたとき、あれほど部屋の中に荷物が増えるのは嫌だと言っていたのに、どういった心境の変化があったのだろうか。
仕事終わりの時間を教えてもらい電話をかけた。
限界OL、寒々しい生活を脱したい。
「連絡ありがとう。相談にはもちろん乗るけど、あれだけ家の中に荷物を置くの嫌がっていたのに、どうしたの?」
「いや、前に作ってくれた棚あったじゃない?あれを眺めてたら、ふとした時に好きなものが目に付くのっていいなって。」
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「だから、飾り棚を増やしたいなって思ったの。」と彼女は続ける。
「それに、改めて、私の家ってなんだか寒々しいなと思ったんだよね。」
「寒々しい?」
「あたたかみが欲しかったから、北欧風に憧れて木目の家具を揃えたはずなのに、なんだか家に帰ってもホッとしないんだ。」
最低限の家具が揃い、散らかっていなくて整っている。でも、あまりに何もないと、安らいだ感じもしないことに気づいたのだという。
「家の中だけでも、もうちょっと安らぐ場所にしたいの。好きなものを眺めながらゆっくり過ごしたい。もうヘロヘロで仕事から帰ってきて、空っぽの胃に缶ビールを流し込んでぼーっとする生活は嫌!!」
「落ち着いて。わかったから。」
彼女の場合、他にも見直したほうがいいことがありそうだが、好きなものを眺める生活のお手伝いならできる。
「で、どんな飾り棚が欲しいの??」
「リビングに謎くぼみがあったの見たでしょ?あそこに棚を置きたいなと思ったんだけど…。」
前に自宅を訪れたときにも気になっていた。建設時に収納を作ろうとして諦めたのか、用途もなくくぼんでいる幅50センチほどの謎の空間だ。
前に訪れたときは行き場を失ったゴルフクラブと掃除用具が置いてあった。
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「あー確かに棚を置くにはいいスペースだね。」
「でも、ネットで色々見たんだけどさ、中途半端な隙間だから、ちょうどいい既製品がなかなか見つからないのよ。スチールラックはいくつかあったんだけど、金属製の棚ってなんか寒々しい感じがするから嫌なんだよね。」
「どんだけ寒々しい暮らしが嫌なのよ。」
「いいじゃん、今の私はぬくもりを求めているの!心が乾いているから!!」
「わかったわかったから落ち着いて。」
「だから、やっぱり北欧っぽい温かみのあるデザインがいいの。でも棚自体が仰々しすぎて圧迫感があるのも嫌なのよね。」
条件が色々ある。
いや、でも、それならうちの商品がお役に立てるかもしれない。
いくつか施工案を作って彼女と相談し、今回は浮かせる家具ブラケットとシェルフレールで120cmほどの可動棚をこのヘンテコスペースに作ることにした。
限界OL、電動ドライバーを握る
電話から約1か月後、金曜日の夜、なんとか仕事を早めに上がってもらった彼女の家へ向かった。
事前に送っていた棚板とラブリコのパーツを並べる。
今回は塗装が必要だったのと、ホームセンターによる時間が無かったので、木材はじゅうたすというメーカーで購入した。
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「すごくいい板…!」
「これを今から棚にするよ!」
「ほんとにできるの・・・?」
電動ドライバーを握るのも初めてだ、という彼女。
手順を説明して、私も同時並行で一緒に作業することにした。
「どのくらいの高さにとりつけたい?」
「うーん、この辺かな?」
「じゃあマスキングテープでしるしをつけて・・・。」
「このドライバー、ネジが全然入らないんだけど!?」
「どれどれ?いや、電動ドライバー、回転方向が逆だよ・・・。」
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「え、これどうやってちゃんとした位置にネジつけるの?」
「大丈夫!多少失敗しても裏面は見えない!」
あーだこーだ話しながら、作業時間は二時間ほど。
世界で唯一、謎のくぼみにジャストフィットした棚が完成した。
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限界OL、潤いを取り戻す。
「すごーい!できた!!」
「好きなもの飾ってみてよ。」
え、どうしようかな、と言いながら彼女はクローゼットからいろんなものを取り出してきた。
父親にもらったという海外のお土産、棚に眠っていた本、好きな作家の画集、趣味で作ったプリザーブドフラワー、旅先で買ったくまの置物やポストカード・・・。
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好きだという絵本作家の画集。これまではテレビボードのスキマに詰め込まれていた
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棚に飾られていくそれらを眺めながら、そうか、彼女はこういう人だったよなと思い出した。
本が好き、メイクが好き、趣味もたくさんある。
「仕事がしんどい!心が乾ききっている!」と嘆く彼女には、これだけ本来心を潤わせる「好きなもの」があるのだ。
「これは?」
「推しの化粧品に、昔お菓子屋さんで貰ったメッセージカード挟んでみた。」
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「・・・化粧品をメモスタンドにしてる人初めて見た。でも確かに、今のあんたには目に付く位置にあったほうがいいわこれ。」
限界OLに気づかされた、「私らしい暮らし」とは
本にぬいぐるみに化粧品に・・・棚のコンセプトはちぐはぐで、統一感はない。
インスタ映えするようなおしゃれさか、と問われると、そうではないかもしれない。
でも、彼女の好きが詰まったこの棚は、あたたかくて、とても魅力的に感じる。
棚を作ったついでに、前回取り付けたトライアングルフレームの棚をもう一段追加した。
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「右肩上がりの人生にしたいから、棚も右肩上がりで!」と笑う彼女。
喜ぶ彼女を見て、私たちが”暮らすがえ”で届けたいことって、こういう暮らしの幸せなのかもしれない、と思った。
整理収納も、こういった飾り棚も、衣食住の”必要最低限”ではない。
これらが無くても人は生きていける。
でも、散らかった部屋に帰るとなんだか気が滅入るし、何もない暮らしは少し心が寒くなる。
自分の好きなものや人・空間に囲まれ、なんだかいい気分で日々を過ごすこと。
インスタ映えするようなおしゃれじゃなくても、統一感がなくてもいい。
それが十人十色の「私らしい暮らし」。
私たちは、つっぱり棒で、ラブリコで、あるいは新たなプロダクトやサービスで、そのお手伝いをしたい。
そんな暮らしを、たくさん届けていける会社でありたいなと思った出来事でした。
さあ、暮らすがえ。