暮らすがえジャーナル

暮らすがえジャーナル

シンプルで身軽に、日本中の地域と繋がっていく。バンライフの「暮らすがえ」

こんにちは、暮らすがえジャーナルです。

キャンピングカーやバン(ワゴン車)などを住居や拠点として活用しながら暮らす「バンライフ」というライフスタイルをご存じですか。もともとは、アメリカやヨーロッパのヒッピー文化やノマドワークの流れの中で生まれた概念です。日本でも、コロナ禍でのテレワークや旅先で仕事をするワーケーションの普及に伴い、この新しいライフスタイルにも注目が集まっています。

そんな新しい暮らしを広げようと、ご自身でバンライフを実践しながら、車中泊が可能な駐車場を併設した田舎体験シェアハウス「田舎バックパッカーハウス(所在地:石川県穴水町)を営む中川生馬さんを訪ね、その魅力についてお話を伺いました。

中川 生馬 さん

1979年東京生まれ。 オレゴン大学卒業後、ソニーなどで会社員として約10年間働いた後、バンライファーに。 2013年5月に石川県穴水町に家族と移住。
現在、Carstay(カーステイ)などで広報担当を務めながら、田舎バックパッカーハウスを運営。

――どうしてバンライフを始めようと思ったんですか?

サラリーマン時代にまで遡るのですが・・・。私は、大学を卒業して東京の企業で働いていました。
毎朝満員電車に揺られて通勤していたのですが、その生活に、どこかに違和感があったんです。
会社での仕事、都市生活の便利さ、物質的な豊かさには感謝しつつも、それだけでは満たされない何かがある気がして。

そこで、会社を辞めて、バックパッカーとして自分にとって未知なエリアだったあまり表に出てこない田舎へと旅を始めたんです。

また、学生時代に体験したアメリカ・オレゴン州でのホームステイやそこでの半自給自足的な暮らしも、私の価値観に大きな影響を与えていて、彼らのライフスタイルはシンプルで、自然の恵みを大切にしながらも、豊かさを感じられるものでした。この経験が、のちに自分がバンライフを選ぶうえでの下地となったと思います。

ホームステイ先の家族のトウモロコシ畑や薪割りなどをお手伝いして、その当時は気づかなかったが「半自給自足」生活を学んでいました。

学生時代に過ごしたホームステイ先のトウモロコシ畑に立つ中川さん(中央)

――学生時代の体験もあり、サラリーマンからバックパッカーになられたのですね。そこからどのようにバンライフにつながっていったのですか?

バックパッカーとして日本の田舎や離島を巡る中で、2011年頃に車旅をしている方々に出会い、その機動性や利便性に感銘を受けました。
バックパッカー時代は、必要最低限の荷物を背負って旅をしていたのですが、それでも荷物は2、30キロあるし、テントを張る場所探しも毎回気を遣いました。
一方で、バンは家そのものを動かせるんです。バンを拠点に地域を散策するスタイルをとることで、身軽に動けるようになり、地域の人とより深く交流できることができるようになったんですよね。

――家という拠点ごと車で移動できるから、そこでじっくり生活ができるようになったんですね。

はい。2012年に車中泊仕様のハイエースを購入して、車を拠点に旅をするスタイルになりました。
もともと気になった駅にふらっと降り立って、地域を歩いて、10分に一度くらい地域の人と話す。みたいなことをしていたのですが、車を停めてそこを拠点に散策するスタイルになったことで、土地の文化や暮らしをより深く知ることにつながった気がします。

バンライフを始めた初代ハイエースでご家族と寛ぐ中川さん

――バンライフを送ることで感じたことはありますか。

一言で言えば、私の人生の選択肢を広げてくれました。
今回の能登半島地震で被災し、自宅が半壊になったのですが、その時、車がシェルターとなってくれました。

また、娘が2人いますが、気軽に色んなところに連れていくことができ、子供たちに異なるライフスタイルを見せることもできていると感じています。

日本は物質的に豊かであり、様々なライフスタイルを選択できる環境が整っているのですが、 社会は物質的な競争に偏りがちです。
バンライフや田舎暮らし、バックパッカー生活など、必要最低限の持ち物でシンプルに暮らすことは、本質的な豊かさを見直すことにつながるような気がします。

「田舎バックパッカーハウス」にはバンライフを楽しむ旅人が集まる

――中川さんは現在、キャンピングカーや車中泊スポットのシェアプラットフォームを運営する「Carstay(カーステイ)」(横浜市)で広報としてもお勤めですよね

そうなんです。

旅を続ける中で、どこに車を停めるかという問題によく直面していたのですが、調べる中で「Carstay」が車中泊スポットのシェアリングサービスを始めたのを知りました。
これは!と思いすぐに東京に行って代表の宮下晃樹さんにお話を伺いました。自分の経験や広報のスキルを活かせると感じ、2019年のサービス開始前から広報業務に関わり始めました。

様々な車でバンライフを楽しむ人たちが集うイベント

――カーステイとの関わりを通じて、気づいたことはありますか

「可動産」という新しい価値観を広めようとしている“仲間”がいることを知ることができたのは大きかったと思います。

動く家が普及すれば、固定された不動産に縛られることなく、もっと柔軟な暮らしが可能になるはずです。
例えば、移動しながら仕事をしたり、観光地での短期・長期滞在を楽しんだりと、生活の選択肢が広がる。特に電気自動車の普及が叫ばれる中で、自動車がこれまでの移動手段から新しい“生活”の基盤として生まれ変わろうとしています。カーステイはその未来を切り拓く一つのプラットフォームとして非常に大きな可能性を持っています。

また、バンライフは持続可能な暮らしや災害時のリスク軽減といった観点でも大きな価値を提供します。
これらの可能性を広く伝えていくことで、バンライフは単なる一時的なトレンドではなく、新しいライフスタイルの一形態として定着していくと感じています。

――最後に、この記事を読む読者にメッセージをお願いします。

バンライフは単なる旅の手段ではなく、自由で柔軟なライフスタイルを提供してくれます。
特に現代のテクノロジーが進化しているからこそ、「家は決まった場所にあるもの」という固定された暮らしだけでなく、新しい選択肢を模索してみてください。
バンライフは、その一歩を踏み出すきっかけになれば嬉しいです。固定観念にとらわれず、自分らしい生き方を追求することで、新たな可能性が見つかるはずです。

穴水町の自宅近くで朝日を浴びながらインタビューに応じる中川さんと愛車

編集後記

今回は社長の香予子自ら穴水町に足を運び、お話を伺いました。

私自身、旅が大好きで、家ごと移動してしまうその発想はとても魅力的でした。特に中川さんご家族を見ていると、バンがあることで「旅が日常」になっているんですよね。旅好きにとって最高の暮らしですね!
住まいの中を組み替えるだけでなく、家の外にある環境自体を変えてしまう。そんなバンライフは、将来の自動運転や電気自動車の普及を考えると、住まいの選択肢としてもっと身近になりそうな予感。
実はうちの父もキャンピングカーを持っていて、今年の夏は親孝行も兼ねてバンライフにチャレンジしてみようと思います。

中川さん、ありがとうございました!

さあ、暮らすがえ。

中川さんの愛車で、海を眺めながらインタビューさせていただきました.