暮らすがえジャーナル

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どんな自分も好きになるーウェルビーイングと働くって何??ー

こんにちは、暮らすがえジャーナルです。

今回は、ウェルビーイングに深い知見を持つEVOL株式会社代表取締役CEO 前野マドカさんに当社代表の竹内が話を聞きました。
最近よく聞く「ウェルビーイング」の本質とはいったい何なのか。
私らしい暮らしをつくる、「自分らしさ」や「幸せの在り方」とはいったい何なのでしょうか。

*ウェルビーイング(Well-being)とは、身体的、精神的に健康な状態なほか、社会的にも経済的にも良好で満たされている状態のこと。Well(よい)とBeing(状態)を掛け合わせた言葉。

前野 マドカさん(写真左)

EVOL株式会社代表取締役CEO。武蔵野大学ウェルビーイング学部客員教授。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科附属SDM研究所研究員。IPPA(国際ポジティブ心理学協会)会員。幸せを広めるワークショップ、コンサルティング、研修活動及びフレームワーク研究・事業展開、執筆活動を行なっている

竹内香予子(以下:竹内):私たちは「暮らすがえ」という行為を通じた住環境のアップデートで「私らしい暮らし」や幸せな住まいに貢献していきたいと考えています。

前野マドカさん(以下:前野):そうなんですね。
愛や感謝、人とつながることは幸福度が上がる要因の1つなのですが、その土台として、安心して帰ることができる居場所があるのは、家族としても人を形成するうえでも欠かせないポイントですね。
今住んでいる場所のスタイルを、家族同士で話し合って、自分でつくっていくことは大事だなと思います。

そういう意味では、生活スタイルによって住空間を変えていくことは、ウェルビーイングでも大事なことです。平安伸銅工業さんの「暮らすがえ」はとても素晴らしい取り組みだと感じます。

竹内:ありがとうございます。最近は特にですが、お客さまやメンバー、さらに地域の人たちも含めて、一緒に幸せをつくっていく時代に変わってきていると感じていて。
「暮らすがえ」の文化を広げるためには、お客様もですが、メンバー自身も「私らしい暮らし」を実践していないと、本当の意味でのお客さま自身の幸せをかなえることはできないと感じています。
そこで重要なキーワードになるのが、ウェルビーイングなのかな、と。最近は特に注目されていますよね。

前野:そうですね、これには2つの理由があると思っています。1つは学術的な成果が出てきていること。幸せな人は不幸せな人よりも生産性が31%、創造性が3倍高くなって、売り上げが37%も高いという研究結果があるんです(https://youtu.be/Fv-eBRllftU?si=sXlrggc4I9DHu80C&t=468)。もう1つは、自己肯定感が低くて自殺が多かったり、働きがいを感じない人が多かったり。環境問題、貧困問題、戦争があってウェルビーイングじゃない世相になっていることです。

大切なのは「心をつなげる」こと

竹内:だからこそ、幸福度を重視する機運が高まっているんですね。そして安心できる場所を整えることはとても大切だ、と。

前野さんは「幸せの4つの因子(https://evol-love.co.jp/)」を意識することで、人生をより自分らしく幸せに過ごせるようになると説いています。幸福度を高めていくためには、どのようなアクションを起こすことが重要なのでしょうか?

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■幸せの4つの因子
1.“やってみよう”因子
自己実現したいことがあること、成長意欲があること、やりがいや生きがいを見つけていること、強みがあることなどに関連する因子です。

2.“ありがとう”因子
物事に感謝していること、利他的で思いやりがあること、多様なつながりがあること、などの良好な人間関係に関連する因子です。

3.“なんとかなる”因子
前向きで楽観的であることや、自己受容できていること(自分のいいところも悪いところも好きであること)などに関連する因子です。

4.“ありのままに”因子
人の目を気にしすぎず、人と自分を比べすぎずに、自分らしく、ありのままに生きていることと関連する因子です。
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前野:1番大事なのは、心のつながりなんです。その入口となる基本的な挨拶が、幸福度を高める大事な行動の1つです。
以前、ご年配の方に「あなたが一番幸せを感じる瞬間は何ですか?」と質問したことがあったのですが、「散歩に行って、知らない人と関わったとき」と答えていらっしゃいました。「社会とつながることができて、本当に幸せなんです」と。挨拶は人との関わりの第一歩ですよね。
自分や相手を肯定する言葉も重要です。みんなのちょっとした頑張りに対して日常的に声をかけ続けると、気づいたときには幸福度が上がっているんですよね。「誰かの役に立っていたんだ!」と、存在承認にもつながるんです。

竹内:私たちの会社でも「ヘイアンプライズ」といって、メンバーがされてうれしかった「ちょっとしたありがとう」や会社のバリューを体現した出来事を、社内チャットで称賛し合っています。改めて前野さんのお話を伺って、働く人たちの幸福度を高めていくうえで意味のあることなんだなって実感しました。

前野:素晴らしいです。すでに行動に移していたんですね!ウェルビーイングはすぐに結果が出るものではないので、そういった小さな習慣でも地道に続けていくことが大切だなと思います。

竹内:ありがとうございます。ビジネスの世界ではやはり短期的な力が働きやすいなと思うのですが、長期的な視点で行動することも大事ですね。

相手ではなく、自分にベクトルを向ける

竹内:その他に、ウェルビーイングについて、前野さんが何かお気づきの点があれば教えていただきたいです。

前野:そうですね、例えば女性はおしゃべり好きな方が多くて、対話の中で情報交換をするんですよね。
すると、どうしても他者と自分を比べてしまいやすいんです。良くも悪くも他人の言動に影響されやすい一面があるなと感じています。
だからこそ、相手ではなく自分にベクトルを向けることで、“私の良さ”を見いだせるようになると考えています。例えば、女性ならではのしなやかさから思いつくことがあったり、優しさで相手に配慮できたりするとか。

竹内:自分にベクトルを向けるんですね。社会全体に目を向けてみても、自分にとっての幸せとは何か、考える機会がとても少ない気がしています。

前野:なかなか自分の良さや目の前の幸せに気づくことができず、“何か足りない”と感じてしまう。特に今はSNSなどのキラキラした情報がぱっと入ってきますから、自分はそんな風ではないと自信を無くしやすいんですよね。
だからこそ、自分ととことん向き合い、自分を深堀することは大事だと思っています。

竹内:確かに、まだまだ自分の良さに気づいていない人って多いような気がします。

前野:そうなんです。そんな自分らしさや幸せを発見してもらえるように、「ウェルビーイング ダイアログカード」をつくったりもしています。トランプのようにエースからキングまで4種類のマークが描かれていて、中央には学術的にエビデンスのある問いが書かれています。例えば「人の目を気にしないでいる秘訣は?」など。カードに書かれた問いを読んだ瞬間に、何かエピソードやアイデアはないか脳は探し始めるので、自分の中から答えをひねり出そうとするんです。

竹内:面白いですね!私たちも、社員自身のありのままを深掘りしてもらうために “マイミッション”を言語化してもらっています。そのうえで会社との重なりを見つけてもらうため、今期の役割や目標を言語化してもらうようなプロセスをとっています。
ただ、メンバー自身がありのままで「やってみよう」と考えていることを引き出すクエスチョンが、私たちの中で洗練されていないのが悩みです。

前野:とても難しいですよね。例えば、1on1やコーチングなどの機会でこういった話を問いかけてみるのもいいかもしれません。「ウェルビーイングは日常生活の中に取り入れられるんだ」「ちょっとした工夫なんだ」と知ってもらいたいです。

どんな自分も好きになる“自己受容”を

竹内:ありがとうございます。ウェルビーイングって身近に取り入れられるものなのですね。ただ、みんな「幸せになりたい」と思っている一方で、わからない、必要ないと思っている方もいるのかな、と思っています。
仕事で数字や成果をどうやって上げるのかに必死になっているから、幸せについて考える一歩を踏み出しづらい、というのも1つありそうです。

前野:その通りだと思います。仕事のときだけは大変でも、プライベートがリラックスして過ごしやすかったらいいんじゃないか、と思っている方もいますよね。でも、先ほど申し上げたように、社員が幸福であればあるほど、生産性も上がって、周りの人も幸せになっていくんです。
それに、仕事は1日の3分の1、8時間も使っていて、一生で考えたらものすごく長い時間になりますよね。この3分の1の時間が幸せだったら、最高の人生になると思いませんか?

竹内:たしかに、楽しく過ごせそうです!

前野:そうですよね。社員にはどんな瞬間も「幸せ!」と思ってもらいたいし、そんな会社でありたい。
本当に身近なところからでいいんです。心のつながりをつくるために、ちょっとお茶を飲んで会話できるコミュニケーションスペースを作ってみたり、一人で考えらえる場所を作ってみたり、緑があると幸福度が上がるという研究成果も出ているので、観葉植物を置いてみたりするものいいかもしれません。
私たちは“かけがえのない人生”を歩んでいるので、すべての人に、今この瞬間の幸せを味わってもらいたいですね。

竹内:本当にそう思います。長期的な目線をもって、できることから始めていきたいと思います。本日はありがとうございました!

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