暮らすがえジャーナル
こんにちは、暮らすがえジャーナルです。
今回は、ieno textileの南村弾さんと竹内の対談をお届けします。
クリップで挟むだけで自由にサイズを調整し、カーテンとして使えるマルチクロス「14‐23」を展開するieno textile(イエノテキスタイル)。
DRAW A LINE(ドローアライン)の新商品、DRAW A LINE Tension Rod Proの開発をきっかけに、コラボレーションが実現しました。
布とつっぱり棒。人々の生活に寄り添うプロダクトを作り続けてきた両者が、ユーザーに届けたい暮らしとは。
南村 弾 さん(写真左)
質感の豊かな布やグラフィックの美しい布、ソファ・バッグ・ファッションにいたる幅広いクリエーションなど、布に関わるものを形にするクリエーター。
2008年、若手デザイナーを評価するドイツの「Tendence」へ選出。
2010年にはデザイン界のアカデミー賞と言われるエル・デコ・デザインアワード、テキスタイル部門で日本代表に選ばれた。世界最大の布の展示会、ドイツ・ハイムテキスタイルでヨーロッパ外から初めて選出され、10年連続でトレンドセッターをつとめた後、2019年からはアンバサダーとして活躍する。
「一枚の布」をキーワードに暮らしにおける布の在り方や使い方もクリエートする。
HP:
ieno textile――今回、DRAW A LINE(ドローアライン) とieno textile(イエノテキスタイル)さんとコラボレーションが実現しました。
竹内香予子(以下:竹内):以前から、ienoさんと何かご一緒できたらいいな、という思いがありました。ienoさんが手がけるプロダクトは、本来の布が持つ機能的な側面だけでなく、テキスタイルで気軽に暮らしを彩るという新たな住まいのあり方を提案されていますよね。それって私たちが届けたい「暮らすがえ」のスタイルのひとつだなと思っていて。
今回開発したDRAW A LINE Tension Rod Pro(以下:Pro)というプロダクトでは、一緒に叶えたい空間が実現できるのではと思ってお声をかけさせていただきました。
南村 弾(以下:南村):実は、私たちも何か一緒にできることがないかなと、こちらからもお声がけしようと考えていたんですよ。だから、お話があったときはびっくりしましたし、「やった!うれしい!」と久々に興奮しましたね。
竹内:そうだったんですね!うれしいです。ちなみに以前から弊社のつっぱり棒を使ってくださっていたんですか?
南村:布をかけるのにはもちろん、防災用の耐震ポールも使っていました。つっぱり棒は、日本の暮らしには欠かせない存在ですよね。どんなご自宅にも、必ず1本はあると思います。平安伸銅さんのように、私たちも“ご自宅に必ず1枚ある布”でありたいと思っていて、ある意味では目指すべき存在だなと感じています。
プロダクトの魅力を体感した自宅スタイリング
――南村さんには実際にProと14‐23を使用して竹内の自宅をスタイリングしていただきました。
竹内:ienoさんの布って、ある面ではすごくシンプルなので暮らしの中に埋没してしまうんじゃないか、と勘違いしていた部分があったんですけど、スタイリングしてもらったら部屋の空気が瞬時に変わりましたね。ienoさんの布が持つ魅力を体感した気がしました。
南村:ありがとうございます。私も、今回Proを実際初めて手に取ったのですが、いいですね。これまで布をかけるときは普通のつっぱり棒を自宅でも使っていて、それでも十分素敵だったのですが、リビングとか意匠性を際立たせたい場所にはやっぱり映えるなと思いました。
竹内:Proでリビングを大きく仕切ってもらいましたね。普通ならあそこにカーテンがあるとどうしても構えてしまうんですが、「14-23」は軽やかで、暮らしの中に馴染んでいました。空間が区切られている落ち着きもあるけれど、人の気配を感じる安心感もあるというか。
南村:ありがとうございます。何か仕切りたいな、と思ったときに布だと気が楽なんですよね。開け閉めも自由だし、気分を変えたいときにはすぐに外せるし、洗うことだってできます。そして、そんなときに⾃在に使えるつっぱり棒はやはり布との相性がいいなと思います。
――こういった布の間仕切りは、どんな場面で使うのが良いでしょうか?
南村︓例えば、リビングやダイニングは先ほどおっしゃっていただいたように、軽やかに仕切る⽅が豊かだと思うんですよね。⼈や⾵、光の存在を感じる余地を残そうと思ったら、好きな色味で程よい透け感の薄手の布が良いと思います。逆に、仕事に集中するために色味を抑えて情報を遮断したり、⾐服を埃や⽇焼けから守るためにしっかりと仕切ることが必要な場⾯もあって。そういった時は透けない厚手の布がいいかなと思います。
⽵内︓奥が深いですね。透ける・透けないとか⾊合いを変えるとか、部屋の⽬的に合わせて布を組み合わせていくんですね。つっぱり棒と似たところがあります。
南村︓リビングや⽬⽴つ場所は、やっぱりProがいいですね。その⽅がなんだか腑に落ちるというか、せっかく家で過ごすなら⾃分の気に⼊ったデザインの⽅が豊かでいいじゃないですか。それに、あそこまでの⻑さで取り付けられるものってあまりないですから。
⽵内さんのご⾃宅の窓には、既存のカーテンレールのさらに上にProを取り⼊れました。
ヨーロッパの住宅は、窓が小さくても、天井から床まで窓の布を垂らすんです。その⽅が空間が伸びやかで広く感じるんですよ。
竹内:そうなんですか!知らなかったです。
暮らしは、もっと気軽に、自分らしくあってほしい。
――のれんや、ヨーロッパの窓など、これまであった布の文化が新しい形になって取り入れられていましたね
竹内:今回、改めてienoさんの布って、暮らしと布、人の関係性をアップデートしているなって感じたんです。「14‐23」はカーテンにも間仕切りにも使えるけど、シンプルだからこそ、もしかしたら、ソファに掛けたりテーブルクロスにしたり、風呂敷にする人だっているかもしれない。汎用性が高いからこそ引っ越しても役割が変わっても使い続けられる安心感があるんです。
昔の日本では、着物の布を衣類や布団にリメイクしたり、それでも古くなったら雑巾にリメイクしたりして役割を変えて使い続けていましたよね。そんな風に、ある面では原点回帰なんだけれど、人、布、暮らしの関係性をアップデートして、その良さを再認識させてくれたんじゃないかなと。
南村:そう思っていただけて、とても光栄です。
竹内:布って毎日身に着けているものなので、とても身近な存在ですよね。同じように住空間にも気軽に布を取り入れられることを知ってもらい、私たちがつっぱり棒やProでその橋渡しができたらいいなって。南村さんのスタイリングを見て感じました。
南村:そうなんですよ。インテリアや暮らしは、ファッションと違って、もっと気楽に彩って、自己表現や、自分の好きな世界観を作り出していけばいいんですよね。
竹内:面白い視点です。ファッションも自己表現の一つですが、どうしても他人にどう評価されるか、人の目を気にするじゃないですか。住まいこそ、その人らしさを表現して、そして自分自身が一番満たされる場所になれたらいいですよね。
南村:それぞれの“マイトレンド”があっていいんですよね。そこではダサいとかおしゃれとかは関係なくて、自己評価でいいんです。その一歩目になるようなものを今作らせていただいているんだなとも思います。
竹内:なんだか、私たちが「暮らすがえ」で家を心地よいものにして欲しいと思っている理由が分かった気がしました。自分を整えて肯定してあげられる場所、それが豊かな社会づくりになるって自分たちなりに思っているからなんでしょうね。
南村:そこが私たちのものづくりの本質かもしれませんね。
住まい手らしい、「なんかいい感じ」 の空間を届けたい
――改めて、プロダクトや今回のコラボレーションを通じて、どんな“暮らし”をユーザーに届けたいですか?
南村︓まずは、気楽に布を楽しんでもらいたいです。カーテンって、どうしてもその窓限りになることが多いのですが、「14-23」は布1枚でさまざまなシーンに活⽤できるので、捨てる必要がないんです。その気軽さや寄り添い⽅が「すごくいい︕」とはならなくていいんです。「なんかいい感じ」だなって。その「なんかいい感じ」の暮らしを知ってもらうことが「14-23」を作っている最⼤の理由かもしれません。
⽵内︓私たちが⼤切にしていることと共通している部分があります。可変性が⾼くてさまざまなものに使い回せる、余⽩のあるプロダクト。それを住まい⼿さん⾃⾝で⼯夫して部屋に落とし込んでもらうことで、その⼈らしい住まいを実現できる。そして、ライフスタイルやライフステージの変化に合わせて、⼀緒に変えていける、ずっと寄り添っていられる。
南村︓いいですね。ブランドの名前をienoにしたのには理由が⼆つあるんですが、そのうちの⼀つが、 3.11が起こった時、家の⼤切さを痛烈に感じたことにあったんです。命をしっかり守り、快適に過ごせる場所でありたい。そんな理想を描いたとき「家のご飯」とか「家のコーヒー」とか「家の○○」ってなんだか落ち着くしなんかいい印象があるなと。⼤阪に来るとよく耳にします。「これ『家の味』に近いわ。」とか。
⽵内︓あまり意識したことなかったですが、確かに⾔うかもしれません「この味なら家でも作れるわ」とか(笑)
南村︓そうそう、それってすごく幸せで豊かなことだと思うんですよね。⾃分たちの軸というか⾃分らしさがある。そんな「家の布」になりたいなと思って名前を付けました。
そんな⾵に、なんかいい感じの布から、⻑い年⽉を経て、愛着のある布、思い出の布になっていければいいなと思っています。
⽵内︓今回のコラボレーションをきっかけに「こんな暮らし⽅があるんだ」と、多くの⽅に知ってもらえたらうれしいですね。