暮らすがえジャーナル

2015年に竹内香予子が社長に就任して約10年。平安伸銅工業は、住まい手1人ひとりの「私らしい暮らし」をかなえるための未来に寄り添い続けてきました。
これまでの会社経営を通して感じたこと、経験したことをたくさんの方にシェアしたい。
そして何かに挑戦する人を応援して、共に支え合いたい。そんな思いからスタートしたのが「かよこサロン」です。
第1回目となる今回のテーマは「夫婦で刻む新しい1ページ」。竹内の共同経営者であり夫でもある、竹内一紘(たけうち・かずひろ)氏をゲストに迎え、夫婦のこれまでの歩みとこれからのカタチを語り合いました。
かよこサロンへの思いはこちら:
竹内香予子のnote「改革を焦るな」「変化を生み出したい」気持ちの狭間で夫婦が決めたこと。
竹内一紘(以下:かず):「僕が平安伸銅工業に入ったのは2014年。もともと設計事務所で5年ぐらい働いていました。
建築の作品を作ることと会社経営はひも付いているなって思うんですよ。経営資源が乏しい中で『どう自分の強みを生かすか』を突き詰める。平安伸銅でもその経験が活かせたのかなと思います。」
竹内香予子(以下:かよこ):「そうだね、かずさんとの“巡り合わせ”があったなって。プロダクトの開発も、かずさんの強みを生かして、日常にありふれたつっぱり棒に新しい価値を見いだしていきましたね。今はありがたいことに子どもを授かったので、家庭と仕事、どちらも豊かにすることを自分たちなりに模索しています。」
――夫婦二人三脚で進めた平安伸銅工業の経営。事業承継をした当初は、事業改革を推し進めたい2人と、長期的視点で慎重に結論を出したい父との間でせめぎ合っていたといいます。
かよこ:「私は32歳で父から事業承継をしたんですが、父からはよく『時間軸を長く考えたほうがいい』『改革を焦るな』と言われていました。でも、私やかずさんは、もっと会社に変化を生み出して、新しい売り上げの柱をつくりたかった。
その結果、父に『私がすべて責任をとるから』と説得をして会社を継いだんですよ。だからこそ全責任を負う覚悟ができて、改革を推進するときにも300%の力で向かうことができたのもあります。」
かず:「当時は売り上げの数字もわかりづらい状況だったので、まずは数字を見える化して、そこから社内の体制を少しずつ変えていきましたね。」
かよこ:「時間や体力があるタイミングで失敗も含めて挑戦できたのは良かったなって。私自身、発想を実務に落とし込む能力や構造化する力はそこまでないんですよ。一緒に仕事をしたらシナジーが生まれそうなパートナーさんを探してきて、『こんな人と仕事したら面白そう!』というワクワクをかずさんにぶつけて(笑)」
かず:「そうだね(笑)」
かよこ:「それをかずさんが『こんなビジネスになりそうだね!』って整理してくれる!それが事業になっていったと思います。」

「家族が一番」対話を重ねた2人の経営スタイル
かず:「僕がかよさんにずっと伝えていたのは、『僕の中での優先順位は家族が一番だよ』ってこと。家族があって、会社がある。それだけ決まっていたら、起こる事象に対してどうしたらいいか考えられるよねって。かよさんはとにかく仕事のほうで突っ走っているし(笑)」
かよこ:「そうそう。かずさんから『家族が一番。だからそれ以外は仕事にして、業務時間内に仕事が終わるようになんとかせい!』と言われて(笑)。私も自分の人生の幸せとして家族を一番にしたいと考えていたので、この優先順位を心がけています。」
かず:「『娘との時間を大事にしよう』ってね。娘の送り迎えは僕、ご飯は彼女とか。そこまで細かく役割分担をしているわけではないけれども、互いに無理のない範囲で支え合っていますね」
2人の経営スタイルについてトークが繰り広げられる中、参加者からはこんな質問も。
――もし意見が対立してしまったら…?
かよこ:「ひたすら話し合っています。家庭と仕事が同じものなので粘り強く対話して、お互いが納得する解決策を見いだしていかないと、家庭も仕事も崩壊してしまうんですよね」
かず:「あとは言い合いになるぞと思ったときは、『ケーキ買いに行こっか』と言います。ケーキを買いに行こうってなったときは『この話はやめよう』っていう合図。」
――仕事と家庭の“顔”は分けていますか?
かず:「かよさん、『仕事の話を家では言わないで!』ってバサッて斬るときもあるよね(笑)」
かよこ:「(笑)。自分の中で切り替えができなくて、仕事の脳みそが稼働していないときは『仕事の話はしない!』ってピシッてね。」

夫婦そろって、子どもに誇れるような生き方に
――仕事と家庭を両立するために、互いに対話を重ねながら理解し合おうと努める竹内夫婦。今後、事業承継をする側になった場合についても迫りました。
かよこ:「子どもが望めば、子どもが継いでいくことも応援したいなと思っています。もちろん決めるのは娘ですが、『お母さんとお父さんがしている仕事っていいな』と思ってもらえるような生き方をしたいなって。」
かず:「僕も『この会社を継ぎたいな』と思われるような会社にしたいですね。そのための準備は整えておこうかなと。」
――娘さんが会社との接点が生まれるように意識していることはありますか?
かよこ:「私たちが会社を通じて、どのように社会を良くしていこうと考えているのか。その気持ちは娘に伝えたいと思っています。会社のイベント事には子どもと一緒に参加して『私たちにとって大切な人たちと一緒にいる場だよ』とあえて言うようにしていますね。」
“人とのつながり”を通じて幸せを見いだす
――そんな竹内夫婦は今、豊かな暮らしの向こう側にある“人とのつながり”を軸にした「幸せ」に目を向けています。
かよこ:「平安伸銅は、もともとアルミサッシを手がけていて、そこから家庭日用品のつっぱり棒に事業ドメインを変えて人気になりました。なので、次は“暮らしを豊かにする”という視点に立って、新しいことにチャレンジしたいなと。まだまだ模索中ですが。」
かず:「僕はこの『かよこサロン』のように、物を作るだけではなくて社会的に意義がある人と人とのつながりを大事にしていきたいです。最近はかよさんもマンションの管理組合に入っていてね。」
かよこ:「そうなんです。都会でいかに人との関わりを生み出して幸福度を上げていくのかみたいな“探求”をしています。
もともと、創業当時から意識してきたのが暮らしの『幸せ』で。じゃあその次の幸せって何だろう?と考えたときに浮かんだのが “人とのつながり”でした。そこで島根県雲南市にある『[コミュニティナース](https://community-nurse.jp/)』という事業を知ったので行ってみると『今必要なのはこれかも!』という感覚を得ました。」
かず:「出雲には都会では得られない経験をさせてくれる人たちがたくさんいるんですよ。いい意味での“おせっかい”、というか(笑)。そこで自分たちに足りない『次の幸せ』につながるキーワードをどんどん体験しながら、もうちょっと周りに還元できたらいいなと考えています。」

コミュニティナース…島根県雲南市に本社を置く株式会社CNCが独自に提唱するコンセプトで、「コミュニティナーシング」(地域看護)の考え方をヒントに生まれた。その地域に住む人全員が心から「毎日が楽しい」と思ってもらえることを目標にした活動。
進化を続ける、これからの平安伸銅工業
かず:「会社のメンバー1人ひとりが一番熱中できる分野で活躍する。“適材適所”を作るのが良いと思っています。例えば、子育てを我慢して仕事を頑張るとなるとメンバーもそうした姿を見て動いていくことになりますよね。そうではなくて、僕たちが理想の状態を体現して、ワクワクすることがすごく大事。最終的には、目の前のお客さまや関係する企業の方にも“ギブ”できるようになりますよね」
かよこ:「これまでは父からの事業承継もあって、短期スパンでの成果に奔走していました。でも娘が生まれたことで『次の社会をどのように作っていこう?』と考えを巡らせるようになって。そこで初めて『時間軸を長く考えたほうがいい』という父の言葉が腹落ちしたんです。これからはより長期的視点で、平安伸銅を育んでいきたいです。」
第2回「かよこサロン」では、竹内のメンターである先輩女性経営者の奥田浩美さんをゲストに招き、公開メンタリングを行いました。今後もさまざまなトークテーマで開催予定です。次回の「かよこサロン」にもぜひ、ご期待ください!
