暮らすがえジャーナル

こんにちは、暮らすがえジャーナルです。
今回は、平安伸銅工業を卒業したメンバーのお話。
(ライター:羽渕)
「京都で蕎麦屋を始めました。」
昨年、平安伸銅工業を卒業された萬(よろず)さんから、ある日SNSでふいにメッセージが届いた。
蕎麦屋で独立!?わからないことだらけだけど、とにかく応援しに行きたい。
経営陣でお祝いを持ってその蕎麦屋を訪ねることにした。
蕎麦屋の名前は「木陰」。
自然が好きだというご夫婦らしい名前だ。
木漏れ日が差し込む午後の縁側のような、そんな優しさがある。
奥さまのさやかさんは、本格的な修行を経て、今はご自身で蕎麦を打っているという。
旦那さんの萬さんは、平安伸銅工業を辞めたあと、「数年後に夫婦2人で蕎麦屋を開業する」夢に向けて、いったん京都で仕事探しを始めようとしていたそうだ。
でも不思議な縁で、ある蕎麦屋のオーナーが店を手放すという話を耳にし、あれよあれよという間に物件が決まり、今に至る。
まるで「初めからご縁で決まっていたような店」だ。
そば屋なのに、カフェみたい

アンティークの古材の扉を開くと、小さな植物がお出迎えしてくれる。
「……ここ、蕎麦屋なの?」
一緒に行った代表のかよさんが、思わず声をこぼす。
アンティーク調の木材、選び抜かれた照明、ひとつひとつの小物に宿るセンス。
そこには“和”の重々しさではなく、“今”の感性に寄り添う軽やかさがあった。
「本格的な蕎麦って、ちょっと敷居が高くて入りづらいと思われがちなんです。
でも、気軽にふらっと立ち寄れて、ちゃんと本格派。そんな場所をつくりたかったんです」
と、さやかさんは微笑む。
「伝統を大事にしながら、少しだけ今の時代に寄り添う」
そのバランス感覚が、心地いい。
自然と平安伸銅工業時代の思い出に話がうつる

自然と、萬さんが平安伸銅工業で働いていた時の話になる。
彼はDRAW A LINE(ドローアライン)の営業担当だった。
もともとアパレルのセレクトショップで接客をしていた経験もあり、常務のかずさん曰く「萬さんは人との距離感がとても絶妙な人」だったそう。
グッと近づいたかと思えば、ふわっと引く。
でも、その“引き”の中に、ちゃんと相手を見ている眼差しがある。
今、彼は蕎麦屋のフロアで、常連さんに挨拶をしたり、地域の人との関係を少しずつ紡いでいる。
さやかさんは言う。
「私は少し人付き合いが苦手なんです。だから、前に出てくれるのがありがたいです。」
いいパートナーシップだなと感じた。
今まで食べてきた蕎麦の中で一番かもしれない

さやかさんの打つ十割蕎麦は、在来種の蕎麦を使い、大阪の老舗での修行経験がしっかりと活かされている。
代表のかよさんも、蕎麦が美味しすぎて、今まで見たことない表情をしている。
「……今日、人生で一番美味しい蕎麦を食べたかもしれない。」
その蕎麦に合うように、寺田本家の「五人酒」や、島根・鳥取の地酒なども揃えている。
料理と日本酒、それぞれが引き立て合うように丁寧にセレクトされているのがわかる。
「卒業=終わり」ではなく、「新しい形でつながる未来」

古材を組み合わせて作られた棚や、空間の動線を邪魔しないテーブルの配置。
私たちが大切にしてきた“暮らすがえ”の精神が、そこに息づいていた。
萬さんは、もう平安伸銅工業の社員ではない。
でも、お店には、こうして私たちが訪れたように、社員も自然と集まってしまう。
それはきっと、「卒業=終わり」ではなく、「新しい形でつながる未来」だと信じているから。
京都に行く機会があったら、ぜひ「木陰」に立ち寄ってほしい。
そこには、蕎麦と日本酒のうまさ以上に、人と人との“ちょうどいい”つながりが、そっと息づいているから。
店舗情報
店名:木陰
住所:〒603-8216 京都市北区紫野門前町56-2
時間:11:30-14:30(lo14:00)
夜と休みは不定のためストーリーハイライトをご覧ください
Instagram @soba_kokage