暮らすがえジャーナル

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つっぱりボーイフレンド第二話:SMP編「ぐっとひと押し!恋の二段バネは止まらない」

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■SMP(エスエムピー)
平安伸銅高校1年生、図書委員の後輩。
手先が器用で細かい作業が得意。
いつも会うと手作りのお菓子をくれる。
小柄でかわいらしく、あなたにとっては弟のような存在だったのに…?





「これ貸し出しお願いしまーす。」

「はい!お預かりしますね!」

カウンターに差し出された本のバーコードを読み込む。
週に1度の図書委員会の仕事も、2年生になると結構慣れてきた。

「2週間後が期限なのでそれまでに返却をお願いしますね。」

「はーい。」

とはいえ、お昼休みに来る生徒はそんなにいないから、数件の貸し出しを対応しながら、あとはカウンターの裏でのんびりお昼ご飯を食べているのだけれど。
友達とわいわいするお昼休みも好きだけど、このまったりした時間も結構お気に入り。


ーーーーートントン。

生徒を見送って一息ついたところで、後から背中をつつかれる。

「せーーーーんぱいっ!」

振り返るとSMP(エスエムピー)君が身体につけたS字フックをくるくる回していた。※

※SMPはスキマ収納に便利な小型のバネ式つっぱり棒です。

「わ!SMP君、お疲れ様!」

「お疲れ様です。今日は僕と先輩がペアですねーよろしくお願いします♪」

「よろしくね!」

SMP君は1年下の後輩つっぱり棒。
時々こうして図書委員会でペアになる。ちっこくて人懐っこい可愛い後輩だ。

「誰かきたら僕が対応するので、先輩は奥でゆっくりお昼ごはん食べてください。」

「え、いいの?SMP君こそ、ご飯もう食べたの?」

「はい!僕はそういうの大丈夫なんで。あ、これもよかったらどうぞっ。」

そう言うとSMP君はS字フックに掛かっていた小さな袋を差し出した。


「昨日焼いたクッキーです、デザートに食べてください。」

「わあ!ありがとー!SMP君のお菓子いつも美味しいから楽しみだなあ。」


SMP君はこうして時々手作りのお菓子を差し入れてくれる。お菓子作りや手芸が趣味らしい。

「今回はアイシングに初めて挑戦したんです♪」

袋の中には色とりどりにデコレーションされたアイシングクッキー。
このカラーボックスの絵は特に自信作なんですよ、と楽しそうに話すSMP君。

「かわいいー!!SMP君相変わらず器用だね。」※

※SMPは最小13cm、小さなスキマにもフィットし器用に役割を発揮します。S字フックやピンチハンガーを使えばカラーボックスの中や冷蔵庫の整理にも便利です。

「じゃあ、お言葉に甘えてお昼ごはん食べてくるね。あ、そうだ。」

私はブレザーのポケットを探って中身を差し出す。

「カウンター結構冷えるから、使いかけで申し訳ないけどカイロ。よかったら使ってね。」

「わ・・・ありがとうございます。」

「風邪ひかないようにね!じゃっ。」



「全く・・・僕、弟だと思われてるのかなあ。」



放課後―—――—――—―


SMP君と再び図書委員のお仕事。
来月の展示企画の当番が回ってきたので、今日は2人で新しい展示の内容を考えることになっていた。

「最近歴史テーマの特集が続いてますよね?」

「そうだね。うーん、たまには違う企画もしたいなあ、あ、ねこの特集とかはどう?」

「いいですね!堅苦しくないし、猫にまつわる小説を集めても面白そうです。」

「そういえば、SMP君も秋の文化祭で猫の仮装してたよね!あれ可愛かったなあ。」

「もう!あれはクラスメイトに言われて仕方なくです!僕可愛くなんかないですからっ!」


SMP君はくるくると小さな体を回して抗議する、その様子も可愛くてつい笑ってしまう。


「あはは、ごめんごめん。」

とにかくテーマは決まりだね、と2人でPCの書籍検索を覗く。
「猫」の検索結果から良さそうな本を相談して数冊ピックアップした。

「これくらいあれば良さそうですね、書架から持ってきましょうか。」

「そうだね!私、この画集と図録取ってくるね!」

「え、いいですよ先輩!僕がやりますよ。」

「何言ってんの。SMP君ちっちゃいんだから、高いところの本届かないでしょ?」

「もー先輩、やっぱり僕のこと馬鹿にしてますぅ?」


不服そうにバネをギシギシと言わせるSMP君。

「あはは、そんなことないよ、それにあの画集重たいし、力仕事は先輩に任せなさい!」

そう言って、私は検索結果を書き取ったメモを片手に図書館の奥に進む。



(えーっと、確かこの3冊はここの棚の一番上だよね・・・ちょっと高いけど、ぎりぎり脚立を使わないで取れるかな・・・。)

背伸びして画集の背表紙に手をかけて引き抜いた瞬間、ふらっと足元のバランスを崩してしまった。
よろけた拍子に手を放してしまい、画集が本棚からずれ落ちる。


危ない、本が降ってくる!!
反射的に身を守ろうと身をかがめて手で頭をガードする。


ガシャン!


・・・・へっ?


バネが大きく軋む音に驚いて、恐る恐る見上げると、SMP君が本棚に自分自身をつっぱって、落ちそうな本をガードしていた。

「SMP・・・君???」


呆気に取られていると、SMP君は図録を軽々と抱えて降りてきた。

「先輩、ケガ、無いですか??」

周りの迷惑にならないように、私の耳元でささやく。


「えっ・・・うん・・・。」

良かった、とほっとする声。急いできたのかまだ少し息が上がっているようだ。


「え、でも、どうして・・・。」


「先輩、僕のこと勘違いしてませんか?」


「勘違い・・・?」

「確かに他のつっぱり棒より小さいけど、こう見えて耐荷重も結構あるんですよ。バネをぐっと押し込んだら、しっかりつっぱれるんです。※」

※バネ式つっぱり棒は取り付けたい長さより少し長めに伸ばし、取り付け位置にぐっと押し込むことで、バネの反発力により強くつっぱることができます。 また、SMPは最小サイズでも最大2㎏の耐荷重。重たいものも安心して掛けられます。

ほら、触ってみてください。とSMP君はさらに私に近づく。
恐る恐るキャップを押し込む。

ギシっ、とバネがきしむ音。


「え、強い・・・!」

「シッ!先輩、図書館では静かにね?」


SMP君にささやかれて慌てて口をふさぐ。
手のひらに感じるしっかりしたバネの反発力。こんな強くて伸縮性があったのね・・・小さなつっぱり棒なのに、強い突っ張りの力と耐荷重が実現できる訳だわ・・・。

「僕、2段バネなんで。実は意外と力持ちなんですよ?」※

「知らなかった・・・。」

※2段バネはSMPなど平安伸銅工業の主なバネ式つっぱり棒に採用されているバネ構造。バネが2段になることでバネの反発力が大きくなり、より強くつっぱりやすくなります。

やっぱり気づいてなかったんですね、と、いたずらっぽく囁くSMP君。

そのまま静かに私の背後の本棚に向かって身体をつっぱる。


これって・・・壁ドン・・・?


さっきよりもさらに近づいた耳元で、SMP君はいつもより低い声で囁いた。

「ねぇ、先輩。」

「え・・・?」


「僕・・・先輩のこと、もっと押してもいいですか?」

この心臓のドキドキは、本が落ちてきそうでびっくりしたからなのか

それとも・・・。